世界遺産かんたん解説!

コラム

日本の世界遺産は現在25件登録されていますが、先日滋賀県の彦根城を26件目の世界遺産として推薦することがニュースになりました。

そこで「確かにきれいなお城だけど、なんで彦根城?」と思った方もいると思います。そこでこのたびの彦根城の世界遺産登録推薦をふまえて、世界遺産検定の勉強の過程で学んだことを分かりやすく、かんたんに解説します!

そもそも世界遺産ってなに?

分類は大きく3つ!

世界遺産検定の学習下で学ぶ定義においては「顕著な普遍的価値」をもつもの、とされています。現代でも未来でも変わらず価値があるに違いないものは保護していこう、ということです。とはいえ価値あるものはたくさんあるので、まずは3種類に分類されます。

種類日本国内の例海外の例特徴
文化遺産姫路城、富士山、厳島神社など20件ヴェルサイユ宮殿、ピラミッドなど時代を代表する建築、現存あるいは消滅した文明の証拠、遺跡など
自然遺産小笠原諸島、屋久島、白神山地など5件イエローストーン、ガラパゴス諸島など自然美、希少な生物の保護区、特異な地形や自然現象など
複合遺産なしンゴロンゴロ自然保護地区、パパハナウモクアケアなど文化遺産と自然遺産両方の特徴を兼ねるもの

つまり彦根城は文化遺産に分類されます。日本のお城ではすでに姫路城が登録されていますね。

世界遺産の登録基準は10個

世界遺産の登録基準を確認してみましょう!

  1. 人間の創造的才能を表す傑作である。
  2. 建築、科学技術、記念碑、都市計画、景観設計の発展に重要な影響を与えた、ある期間にわたる価値感の交流又はある文化圏内での価値観の交流を示すものである。
  3. 現存するか消滅しているかにかかわらず、ある文化的伝統又は文明の存在を伝承する物証として無二の存在(少なくとも希有な存在)である
  4. 歴史上の重要な段階を物語る建築物、その集合体、科学技術の集合体、あるいは景観を代表する顕著な見本である。
  5. あるひとつの文化(または複数の文化)を特徴づけるような伝統的居住形態若しくは陸上・海上の土地利用形態を代表する顕著な見本である。又は、人類と環境とのふれあいを代表する顕著な見本である(特に不可逆的な変化によりその存続が危ぶまれているもの)。
  6. 顕著な普遍的価値を有する出来事(行事)、生きた伝統、思想、信仰、芸術的作品あるいは文学的作品と直接または実質的関連がある(この基準は他の基準とあわせて用いられることが望ましい)。
  7. 最上級の自然現象、又は、類まれな自然美・美的価値を有する地域を包含する。
  8. 生命進化の記録や、地形形成における重要な進行中の地質学的過程、あるいは重要な地形学的又は自然地理学的特徴といった、地球の歴史の主要な段階を代表する顕著な見本である。
  9. 陸上・淡水域・沿岸・海洋の生態系や動植物群集の進化、発展において、重要な進行中の生態学的過程又は生物学的過程を代表する顕著な見本である。
  10. 学術上又は保全上顕著な普遍的価値を有する絶滅のおそれのある種の生息地など、生物多様性の生息域内保全にとって最も重要な自然の生息地を包含する。

1~6が文化遺産の基準、7~10が自然遺産の基準、そのどちらの要素も含めば複合遺産となります。

  1. こんなの作る人間ってすごい!
  2. 文化が交わってできた遺産!
  3. 文明や文化が存在した証拠!
  4. その時代の象徴的な建物!
  5. 伝統的な暮らし方!自然と調和し生きてきた景観!
  6. 人類史に残る歴史出来事、芸術、信仰の象徴
  7. とにかく美しい自然
  8. 地球の歩み、生命の進化
  9. 生物の住む世界を守ろう
  10. 絶滅危惧種の保護

1~6が文化遺産の基準、7~10が自然遺産の基準、そのどちらの要素も含めば複合遺産となります。

今回登録を目指す彦根城は、城郭としての建築価値に加えて、江戸時代の独特な大名システムの象徴として推薦されています。現時点で明示はされていないものの1~4あたりが当てはまるのではないでしょうか。ほかの遺産でいうと、富士山は3、6が該当します。「富士山に対する日本人の文化と伝統そのもの」「富岳三十六景などの芸術や信仰の象徴」といったところですね。7以降の項目は適用されていないため文化遺産の項目としての認定です。

富士山でわかる文化遺産と自然遺産

ここで「富士山は自然遺産じゃないの?」と思う方もおられるかもしれません。わたしも「富士山って形はきれいだし見た目も美しいし、噴火するかもしれないけどそれも含めて自然だし…」と自然遺産でないことに違和感がありました。
結論から言うと、世界遺産としての富士山が持つ「顕著な普遍的価値」は自然的価値とは異なります。日本人が昔から「富士山がきれいに見えると嬉しい」「めでたい気持ちになる」「登るとご利益ありそう」「火山は怖いから神社を作ろう…」と考え、絵を描いたり拝んだり登ったりしたその文化の象徴として評価されました。そのため、登録の正式名称は「富士山 信仰の対象と芸術の源泉」です。富士山域以外にも、富士山本宮浅間大社、三保松原、忍野八海など富士山周辺の神社や景勝地が含まれています。


「いやでも自然としても美しいじゃん…!」と言いたいところですが、富士山は人とのかかわりの深さゆえに開発が進み、環境の悪化が指摘されていました。また確かに美しい円錐形の火山だけど、世界的にはそこまで珍しいわけではないようです。日本もそうした現状を踏まえて、自然遺産ではなく文化遺産での登録を目指しました。

なんで世界遺産を目指すの?

世界遺産になるメリット

世界遺産登録を目指した熱心な活動が各地で行われているのは周知の事実ですが、あらためてなぜ登録を目指すのでしょうか。「顕著な普遍的価値があるものは保護して後世に残すべき」というのは前提として、ここでは世界遺産に登録された時の現代のメリットを考えます。

観光振興により相互理解や多文化理解につながる

「あそこ世界遺産に登録されたし行ってみようか」と自然に会話が起こるように、やはり世界遺産登録は観光地として別格の肩書です。その経済効果はいわずもがな、地域に根付いた馴染みある建造物や自然が世界に認められること大変な喜びでしょう。そして国内のみならず、海外からの観光客がその遺産を訪れ学ぶことは、文化の垣根を超えた相互理解につながります。たとえば海外の宗教施設を訪れた際に、そこでのルールやマナーを守ることも多文化理解のひとつです。

ユネスコから基金援助、技術的支援が受けられる

「結局金じゃん!」と思うかもしれませんが、定期給付金のようにに毎時支払われて収益化するものではありません。災害や戦争で危機に瀕したときの緊急援助や、保全保護のため技術者を派遣するなど、世界遺産委員会で決定された援助が対象です。そして日本はどちらかといえば援助する側です。基金の資金である分担金拠出額は世界3位ですし、各国へ技術の提供も行っています。現在分担金1位のアメリカが脱退しようとしてるので結構大変な状況だったりします。2位は中国です。

しかし課題も生まれてしまう

世界遺産登録にむけた推進活動のいっぽうで、「人が来すぎると地元民は困る」という声もあります。たとえば京都はもう観光客だらけで、「今日は人を見に来はったんですか?」と皮肉も言いたくなる状態。これらはオーバーツーリズムと表され、つまるところキャパ越えです。海外でもイタリアのヴェネツィアなどで深刻な問題になっています。自分の地域に世界遺産ができてそんな状態になるくらいならいらない、という思いも分かります。また文化の相互理解がかなうはずが、やはり無神経な人も少なからずいます。保護していくための世界遺産のはずが本末転倒になりかねないのは残念なことです。

どうすれば世界遺産になれるの?

次なる登録を目指す遺産たち

2026年6月現在、日本が世界遺産登録を目指しているものは彦根城だけではありません。候補物件はユネスコの世界遺産センターに提出する「暫定リスト」に記載され、登録の準備を行っています。現在記載されているのは彦根城と以下3つです。

  • 古都鎌倉の寺院・神社
  • 飛鳥・藤原の宮都と関連資産
  • 既に登録済の平泉の建築群の登録範囲拡大

加えて、このリストに載せるためのさらなる控えが各地に点在しています。暫定リストに載るものは、日本としては世界遺産登録の準備ができていると判断した最有力候補たちですが、そこからさらに1年に1件のみ推薦書をユネスコへ提出し、登録可否の専門調査が開始されます。その結果、登録するか不登録か決定されるのです。さらなる情報照会や延期の決定がなされることもあります。延期は「惜しい!」、不登録は「やり直しね」というようなニュアンスです。

彦根城、5度目の正直…!

彦根城は過去に不登録とされ5度目のやり直しの最中です。江戸時代の大名統治システムとは結局何ぞや?の証明や、既に登録済の姫路城との差別化に苦戦しているようです。しかし今回の推薦は今までと違い、ユネスコの機関による助言を受ける「事前評価」を取り入れました。ユネスコ直々のこうした方がいいんじゃない?という意見を踏まえての推薦ですので、力の入り具合もひとしおでしょう!
暫定リストは1992年に作成されましたが、彦根城および鎌倉は初期メンバーです。仲間はどんどん世界遺産デビューをし、30年以上にわたり登録の時を待ち続けるこの2件は超古参になってしまいました。あとからリスト登録され、先にデビューした遺産も数知れず…。今回こそ、準備万端の彦根城が世界遺産デビューすることを祈りたいです。

がんばれ彦根城!!

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